色のコラム

2023.6.30
 

Fashion Color History vol.5

「JAFCA ツートーンカラー配色帖を発行・1957」


※「 Fashion Color History」では、過去の「流行色」にまつわる話題を紹介します。今回は、1957年にJAFCAが発行した、「ツートーンカラー配色帖・1957」についてのお話です。
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単色志向全盛の中で配色を意識させるようになった
「ツートーンカラー配色帖」

一般にツートーンカラー(ツートンカラーとも)とは、2色の組み合わせによって色彩の美しさをより強調する配色のことである。一口にツートーンといっても、同系色による配色や、カラーコントラスト配色などがある。
JAFCAがツートーンカラーを提唱したのは、1957年秋冬ウイメンズウェアカラーにおいてであった。その前シーズン1957年春夏ウイメンズウェアカラーとして「ジュエリートーン」をテーマ名に、澄んだ宝石の色を提唱した。そして同年秋冬も引き続き、同じテーマ名の「ジュエリートーン/ツートーンカラー」を採用した。その理由は、春夏の明るい宝石色を基にした明暗コントラストによるツートーンカラー配色を秋冬提案の意図としていたからであった。
この時のツートーンカラーは、同等の面積対比を積極的に活用した明暗コントラスト配色提案で、ティント(明るい調子の色)とシェード(暗い調子の色)のカラーコーディネーションの面白さを提唱するものであった。
それに続き、1957年(昭和32)8月、JAFCAは『ツートーンカラー配色帖』を発表。これはJAFCA専門委員及び日本デザイナークラブ(NDC)のデザイナーの有志によって創作された配色例を編集したもので、類似色系、反対色系それぞれの2色配色バリエーションを90例にわたって紹介したものであった。
JAFCAが発表した「ジュエリートーン/ツートーンカラー」と『ツートーンカラー配色帖』は時代が要求していた「シンプル」「スポーティ」といった感覚とマッチし、ファッション製品よりはむしろ自動車、家電製品といった工業製品を中心に「ツートンカラー配色」を進出させることになった。
いずれにしても、今では普通に使われるこの配色も、当時は色彩表現の差別化の一手段として非常に新鮮に受けとめられた。そして、単色志向全盛の折り、人々が最初に「配色」を意識したのが、この「ツートーンカラー」によってであった。
JAFCAが発行した「ツートーンカラー配色帖」。当時、自動車や家電商品などにもツートーン配色が人気だった。


「ツートーンカラー配色帖」についての当時の解説

『ツートーンカラー配色帖』に掲載された解説を以下に紹介する。(表記などは1957年当時のまま)

〈ツートーンカラーとは〉

ツートーンカラーは色の二重奏である。二つの色の組合わせによつて、色彩の美しさをより強調しようとするもの。
すべて色彩の美しさは、そのコンビネーションのいかんによる。組合わせは2色の場合も3色の場合もあり、またもっと多色の場合もあるが、ツートーンカラーは二つの色、或は二つの色系統のコンビネー ションによるカラーハーモニーで表現される美しさである。
カラーハーモニーを表現する手段はいくつもある。その一つとしてよく用いられる手段に、色のアン サンブレィション (揃い)を利用することがある。例えばーつの服装の中にとり入れる色を同系統の色 に統一することである。即ち同系色の配色法であって、これはさして変哲もないが、カラーハーモニーを表現する最も安全な一つの方法である。

またもう一つの方法に、色のアクセントを利用することがある。例えば服装の色で、ベルトの色を変えるとか、アクセサリーの色を対照的な色にもつてくるというようなやり方であつて、大きな面積を占める服装本体の色に対し、小さな面積のアクセサリーの色を対照的な色に配してアクセントをきかせ それによって全体を統制する方法である。
ツートーンカラーはこれらの方法とはまた別な行き方であつて、異なった系統の二つの色の対比を積 極的に利用してカラーハーモニーを企図するのである。

また面積的にもほとんど同等な色の対比からくる配合の美しさをねらうものであって、アクセント配色のような使い方は例え二色の組合わせではあってもツートーンとは考えられない。例えばブラウスやジャケットとスカートの配色とか、ドレスとコートの配色といつたような場合に、このツートーンがよくあてはまる。
自動車にはツートーンカラーがよく使われているし、扇風機やミキサーのような電気器具の色にも最近はツートーンカラーが使われるようになった。また食器のセットなども二種の色のコントラストを利用して美的效果をあげることも考えられる。

〈なぜツートーンカラーが流行するか〉

ツートーンカラーがこのように各方面にとり入れられる理由は、時代の感覚が、動的に端的にシンプルと働いているからである。現代の服装は必ずどこかにスポーティな感覚が通っていなければならないと云われている。そういう現代的な感覚を表現するのに、 色彩の上ではこのツートーンの行き方が最も適しているからである。

装飾過多のものは今日の時代感覚には合わない。手のこんだ装飾を楽しむ余裕は、この忙しい時代にはなくなってきている。しかし人間の装飾本能がなくなったわけではない。装飾本能を満足させる手段が変ってきているのである。装飾の細かい技巧に代ってもっと端的に装飾本能を満足させる色彩の美し さをねらうことが考えられてきたのである。あらゆる商品がもう、 色彩が悪ければ売れないということが事実となつてきていることは、この辺の事情をよく物語っている。
色彩の美しさを最もシンプルなかたちで表現できるのがツートーンである。そういう意味でツートーンカラーの流行はもはや疑なく必然的な動きであることが了解されるであらう。

本集の配色は、 日本流行色協会の専門委員及び日本デザイナークラブのデザィナーの有志に依頼して創作された配色例から選ばれ、編集したものである。従ってこれらの配色例の一っーっに、カラーハーモニーに対する専門家の深い配慮がうかゞわれるものであって、本集がカラーハーモニーの実際の手引となることを信じて疑わないものである。

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