色のコラム

2015.07.21

日本の流行色・1990-91年

||ネイビーとブルー系のヒット・1990年代

ここ数年高い人気が続いているネイビー。2007、8年頃より売れ筋の上位色として登場するようになり、以降その人気は拡大し衰えをみせません。
もともとネイビー(紺)は、ベーシックカラーのひとつとして無難で合わせやすい色といわれていますが、こんなに大きな流行は久しぶりといえます。
それ以前のネイビーの流行といえば、今から20数年前、1990年頃にネイビーブレザー(紺ブレ)の大ヒットとともにネイビーの大流行がありました。
先般JAFCAから発行された書籍「日本のファッションカラー100 —流行色とファッショントレンド1945-2013」(ビー・エヌ・エヌ新社)から、当時の「紺ブレ」についての説明をご紹介しましょう。

|| 紺ブレ 1990-91

1990年秋冬頃から、「渋カジ」の流れの一つとして「キレカジ」と呼ばれるスタイルが流行する。そうした着こなしの定番アイテムとして大ヒットしたのが、ネイビー(紺)のブレザー、略して「紺ブレ」だ。
キレカジとは、「きれいなカジュアル」の略で、上品さや清潔さがポイントの単品組み合わせカジュアルスタイルだ。基本となるのはベーシックなトラッドアイテムだが、渋カジで鍛えた着くずしのテクニックをトラッドアイテムに応用したものといえる。
その中心アイテムである「紺ブレ」は、金ボタンのダブルブレストのタイプが典型的。オーソドックスで飽きのこないデザインと、カジュアルにもドレッシーにも着られる表情の多彩さが人気を呼ぶ。90年、雑誌『POPEYE』が、渋カジからステップアップしたきちんとしたスタイルとしてネイビーブレザーを提唱。やや年齢層が高い読者がターゲットの『BRUTUS[ブルータス]』でも、フレキシブルな着こなしが注目される中で、コンサバティブにもアバンギャルドにもなるアイテムとして、紺のブレザーが紹介された。こうしたメディアからの影響もあり、91年春夏には、渋谷の街は紺ブレをまとった若い男女で溢れる状況となる。
男性では、紺ブレにジーンズを合わせたり、インナーにT シャツを着るといったカジュアルな着こなしが多い。女性では、キュロットスカートやプリントのワンピースと合わせたフェミニン調が主流だ。男女共に、トラッドアイテムの定番であるマドラスチェック柄が再び人気を集め、シャツにもパンツにも取り入れられた。91年冬のトレンディドラマ『東京ラブストーリー』にもこうしたファッションが反映されており、このドラマの大ヒットによってキレカジ・スタイルは全国的に大流行する。


加えて、当時はこのネイビーとともに様々なブルー系も人気色となり、「青のブーム」がおこりました。ネイビー+ブルーバリエーション(+白)の、ブルー系カラーでまとめたコーディネーションは、現在でも多くみられます。

|| 青のブーム 1991

キレカジにみられるようなコンサバティブスタイルの流行、それに伴う紺ブレの人気、また、かねてからのエコロジー志向が相まって、91 年頃からあらゆるトーンの「青」が流行色となる。
紺ブレの流行によって、「ネイビー(紺)」という色が見直される。紺は、従来から日本人に好まれる色だが、就職活動や入学式といった場面で着用する無難な色といったイメージが強く、オシャレ着の色としてヒットすることはなかった。しかし、「地味」「無難」といった保守的なイメージが、「伝統的」「誰にでも似合う」といったプラス方向に再評価され、多くの人びとに受け入れられるようになる。
そうした定番志向が広まるにしたがって、ネイビーに限らずさまざまトーンの青が人気となる。91 年春夏のファッション市場はブルー系が主流となり、日本流行色協会の市場色彩動向調査によれば、スカイブルーからダルブルー、その他すべてのブルー系カラーの値が伸びている。ブルージーンズにサックスブルーのシャツ、ネイビー系のマドラスチェック、カットソーなどで展開され、ブルー系で色相をまとめその濃淡で組み合わせる「トーン・オン・トーン」のコーディネートが多くみられたのも特徴だ。
また、ブルーにはエコロジーに関連したイメージも・・・(続きをご覧になりたい方は「日本のファッションカラー」をご覧下さい。)


*「日本のファッションカラー100 —流行色とファッショントレンド1945-2013」(ビー・エヌ・エヌ新社)では、このような戦後のファッションと流行色の重要なキーワードを100選び出し、イラストとともに解説しています。詳しくはこちら。

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