色のコラム

2013. 03. 18

モノの色いろいろ 
JAFCA 出井文太

|| グリーンを巡って

ふだん何げなく使っている色名ですが、色の名前として使われる色名の背景を探っていくと、おもいがけない面白い発見に出会うことができます。色名は、あるモノの名前が、その色名として呼ばれるようになったものであり、その色名のもとになったモノが持つ様々な、自然、文化、歴史などの背景を抱えています。ある色名の由来をたどっていくと、その色名が持つ意外な背景に出会うこともあります。このコーナーでは、そうした色名の背景が持つ様々な面白いエピソードをご紹介いたします。 

|| タータン・グリーンとブリティッシュ・グリーン

 
 
タータンチェックの名称で日本でおなじみの格子柄は、英国の伝統柄であり、英国ではクラン(氏族)タータンと呼ばれ、各氏族がそれぞれ伝統の格子柄を家紋のように所有していたと言われています。そのタータンチェックに特有の色として、濃いグリーンがタータン・グリーンの色名で、今日に伝わっています。 この濃いグリーンは、スコットランドの高地地方(ハイランド)の人々に好まれたハイランド・グリーンに由来すると言われています。また、もう一説では、アイルランド(現在の北アイルランド)の守護聖人と言われている聖パトリックを象徴するグリーンであるとも言われています。アイルランドでは、毎年3月17日に聖パトリック祭が国の最大の行事として行われており、この祭りはアメリカに移住したアイルランド系移民にも受け継がれています。この聖パトリック祭を象徴する色がグリーンであり、その祭りに際しては、グリーンのクローバーの葉の模様の旗が伝統的に用いられています。 タータン・グリーンの濃いグリーンは、スコットランドやアイルランドだけではなく、イングランドの英国人にとっても伝統的な色であり、伝説上の義賊ロビン・フッドが住んでいたいたというシャーウッドの森を象徴する色と言われています。ロビン・フッドは、五月一日に行われる五月祭におけるメイ・キング(五月の王)とも呼ばれており、シャーウッドの森とロビン・フッドは五月祭を象徴する緑にも関係していると思われます。色名では、シャーウッドの森にちなむシャーウッドのほかにも、森の緑、フォレスト・グリーンが慣用色名になっています。 このように英国に伝統的に伝わっている濃いグリーンは、他の国から見ても英国をイメージさせるグリーンとして、現在では、ブリティッシュ・グリーンという色名も慣用化しています。この濃いグリーンは、英国のジャガー車などに特徴的に見られるグリーンであり、現在でも英国調の高級イメージを訴求する上で、ダークグリーンは車体色の定番の一つになっています。ちなみに、かつて英国F1チームのナショナルカラーになっていたのが、ブリティッシュ・レーシング・グリーンと呼ばれる、ベリーダークなブラキッシュ(黒に近い)・グリーンでした。  

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